2020.02.07 -ESSAY

入店してきたマダム達。

恵比寿のとある喫茶店で一人本を読んでいたら、マダムの団体が入店してきた。席に着くとしきりに、手相の話になっていった。気になりすぎて、本の内容が全然頭に入ってこない。

よく話を聞いてみると、どうやらその日はこの喫茶店で占い師のイベントが催されていたらしい。確かにそれっぽい年増の女性が奥に座っている。その人達の会話が気になりすぎて、本を読む気にならず、スマホをいじるフリして盗み聞くことにした。

とりあえず何でその女性達はスピリチュアルに熱心なのか、僕なりに考えてみた。なんとなく結論が出てしまった。それは彼女達はもしかすると失敗談の飽和状態ということ。

彼女達の席に珈琲が運ばれるのと同時に、リーダー的存在のマダムが以前の成功体験を話し出した。

「手相を見てもらった後に、宝くじを買ったらね当選したのよ。」

周囲は「へー、凄い。早く見てもらいたいわ。」と、空気を読むかのように絶妙な間で返答した。

話を聞いている限り、彼女達はスピリチュアルそのものに興味は無く、あくまでも成功体験に興味を持っていた。また、世には失敗談でマウントを取ってくる者もいて、彼女達も例外ではなかった。旦那の話になると、皆いつも通りの雰囲気で話題を進めていく。

これはあくまでも推測の範疇でしかないが、マダムは旦那から褒められることはなく、逆に失敗に対して文句を受けることは日常茶飯事。だから、彼女達の会話のなかで失敗談を含めて失敗に対して飽きていると仮定する。

そうなると、ふと成功体験を語り始めるとマダムは興味津々に身を乗り出す。それにより、普段の飽きを乗り切ろうとしているのではないか。そのツールとして手相占いを利用し、誰かが幸運な手相であれば一気に盛り上がる。彼女達の盛り上がりを侮ってはならない。

よくよく考えると、スピリチュアルって失敗続きの人がハマる側面がある気がする。それが彼女達にとって、上手く当てはまったのではないだろうか。しかし、成功体験を得たところでその場しのぎにしかならない。寧ろ、成功体験を追い求めると今度は失敗談に重きが置かれる。

でも、マダムの井戸端会議はこういうものと言われたらそこまで。その世界は全くの未知だから。

でも、これは逆パターンもあり得るだろう。めちゃくちゃ優しい旦那だったら、失敗も失敗談にならないはず。となれば、周りの失敗談を聞くと普段の生活では起こらない出来事だから、興味本意で少なからず聞き耳を立てるだろう。

そうなれば、自分の優位性を実感し極端な話マウントを取れる。マウントさえ取れれば、別にスピリチュアルに頼らなくても普段の生活に飽きることはないだろう。

だから、スピリチュアルにハマる要因の一つに、もしかすると旦那の存在があるかもしれない。というか、僕の脳みそではそれ以外に思い浮かばない。それ以外となると、もっと宗教的というか幻想的みたいになってきてしまう。

これらは全て私の憶測であり、尚且つ事実に基づいていない可能性が極めて高い。しかし、目の前の席には、手相占いで店一番の盛り上がりを見せるマダム達が存在しているということだけは確かだ。

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