2020.02.08 -ESSAY

夜更けのおでん。

深夜のコンビニで飲み物と食料を選びレジに向かうと、何やら店員同士がざわついていた。僕の顔に何か変なものがついているのかと思い、下を向きながら顔を掻いた。それでもざわつきが収まらないので、会話を聞いてみた。

「あのおじちゃん、おでんの具を選んでカップに移したのに結局買わなかったね。」

何だその面白そうな会話。それでも僕はいつも通り無愛想な出で立ちで振る舞った。パスタの温めを聞かれて、僕はお願いした。その温めを待っていた時、封筒を漁りながらおじちゃんが入店してきた。

「ごめんなさいね。それ買います。」

おじちゃんはカップに移した自選のおでんを指差して言った。

それとほぼ同時にレンジがチンと鳴る。おじちゃんはおでんに使う薬味を選び、僕のパスタ用に準備した茶色のレジ袋に入れる。店員は面倒くさそうに再び茶色のレジ袋を用意し、パスタとフォークを入れた。

「お待たせしました。ありがとうございました。」

そのまま僕はレジから立ち去った。

恐らく、おじちゃんは最初の会計で財布にお金が無かったのだろう。仕方なくおでんを諦めたが、車に戻ってお金が入っている封筒を見つけた。その勢いで、再び店内に戻り、ぬるくなったおでんを購入した。

店員はまさか戻ってくるとは思っていなかっただろう。その証拠として、レジ袋をパスタ用の一つだけしか準備していなかった。

それでも、おでんを購入するべく戻ってきた。そして、自選したそれらを見つめているおじちゃんを、店外から眺めた。端から見て別に面白い要素なんて何一つない。

そこで思った。おじちゃんは何故それでもおでんを買ったのか。

取捨選択に追い込まれたあの時、おでんを選ぶこともできたはず。

「まさかタバコ代とジュース代しか財布に入っているとは思わなくて。いい匂いに釣られてね。」

薬味を選んでいたあの時、確かに言っていた。つまり、おでんはついでに買おうとしか思っていなかった。レジで会計を済ませている時に目移りしたのだろう。

でも、おでんは本来の目的ではないから、戻るにも気が引ける。だって、店員に二手間くらい面倒を押し付けたのだから、今さら戻っても嫌な顔をされるに違いない。そういう嫌悪感をも払いのけてレジに戻ってきた。

おでんにこんなにも秘められたパワーがあったとは知らなかった。冬の寒い時期に人気の看板商品ってことは重々承知していた程度。正直、僕だったら嫌悪感を取るか逃亡を取るかと言われたら、迷うこと無く逃亡を選ぶだろう。

それをも乗り越えるおでん。大抵はレジでおでんの匂いを嗅ぎ、ついでに買おうと思う。それこそがコンビニおでんの醍醐味。でも、本気でおでんを欲しているのであれば家で鍋を用意するだろう。準備するのは面倒だけど食べたい。その手軽くおでんを食べたいという要望に不自由無く応えているのがコンビニのおでん。

そういえば時々、コンビニのおでんを愛してやまない、店外で屯している田舎のヤンチャな兄ちゃんに遭遇する。実際、こんな地味な僕でさえコンビニでおでんを買い、しょっちゅう店外で食べていた。

おでんに対して、いささか渋さを感じるのは僕だけだろうか。だから、兄ちゃんは少しでも自分の大人っぽさをアピールできるかもしれない。また、渋いのは渋いのだが、若者が食べても何一つ違和感がない。おにぎりやパンといったミニマムで可愛さを兼ね備えたものではない。

そして、言うまでもないが、タバコやお酒と違っておでんは誰がなんと言おうと合法である。だから、大っぴらに大人っぽさをアピールできる。

それに付随して、おにぎりなどに比べて、わざわざ箸を割らなきゃ食べられないおでんは、屯する一つの口実にぴったりだ。その汎用性がもしかしたら、田舎のヤンチャな兄ちゃんが惹き付けられる要因の一つなのかもしれない。

どっちにしろ、老若男女の秘めたパワーを呼び起こす「おでん」は何とも不思議な存在だ。

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